とみだ再発見

三重県四日市市富田の非公式ブログ

富田ゆかりの土鈴 〜蝙蝠堂と藤井陶楽

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近鉄富田駅から中央通りを東へ下り、やや左に折れるあたりに立派な塀で囲まれたお屋敷があります。塀の上には鳩がのっていたり、奥の建物の鬼瓦が蝙蝠だったりで、とても素敵です。ここは元作り酒屋「酒吉」で、三重県指定有形民俗文化財の「蝙蝠堂民俗玩具」の伊藤家のお屋敷です。

リンク

・蝙蝠堂民俗玩具 | 四日市市役所

・富田の宝「蝙蝠堂民俗玩具」を見学 - まちづくりのひろば

 

四日市周辺は昔から萬古焼の産業がありました。明治42年(1909年)朝日郡羽津村に陶工の長男に生まれた藤井陶楽(本名昇)は、桑名萬古の名工・陶華園翠峰に師事、原型づくりを学びました。

昭和7年、富田の郷土玩具収集家の伊藤蝙蝠堂(1903〜1960年、三代目吉兵衛)と出会った陶楽は、蝙蝠堂に勧められ、土鈴作りを開始。翌8年、陶楽は24歳で独立し、羽津城南に「異風窯」を開きます。昭和の始め頃から広まった「郷土玩具収集ブーム」はピークを迎え、陶楽の「彫が繊細で音の響きにこだわった土鈴」は全国各地の収集家から絶賛を浴びました。

昭和9年に開催された蝙蝠堂主催の「於茂千也(おもちゃ)祭」で、郷土玩具研究家の川崎巨泉の目に留まり、巨泉は四日市祭りの山車の特徴を仕立てた鯨船、人魚、ヒョットコお福、司馬温公、大入道、ばけ狸等の土鈴を紹介。藤井陶楽は、翌年からは富田鳥出神社恵比須講鯛土鈴、富田まつり名物鯨船鈴(蝙蝠堂考案)、霞ヶ浦競馬鈴や海水浴場鈴など、郷土の伝統行事や風土にちなんだ土鈴を次々に創作し、爆発的人気を呼びました。

(※四日市文化協会発行「四日市の礎Ⅱ 60人のドラマとその横顔」から抜粋)

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四日市祭りの山車の土鈴 鯨船と鯨 (鯨船と鯨・大入道の土鈴は現在も生産され「じばさん三重」で入手可)

 

現在の藤井陶楽は3代目。2代目の奥様が3代目として熱田神宮へ納める土鈴を中心に生産を続けられています。

リンク

・郷土玩具 陶楽の土鈴